皆さん、こんにちは。鎌倉駅西口より徒歩3分の鶴岡歯科医院です。
矯正治療を受ける際、「費用が高額で不安…」という声をよく耳にします。実は、医療費控除という制度を上手に活用することで、治療費の一部を所得税や住民税の軽減につなげることができます。しかし、矯正治療は必ずしも控除対象になるとは限らず、申請にはいくつかの注意点があります。今回は、矯正治療にかかる費用で医療費控除を受ける方法と注意点について、詳しく解説いたします。
▼矯正治療で医療費控除を申請する方法
◎医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えると、所得控除が受けられる制度です。対象となるのは、本人や生計を一にする配偶者・家族のために支払った医療費で、総額が10万円または所得の5%を超える部分が控除対象になります(上限200万円)。
矯正治療も、条件を満たせば控除対象に含めることができます。
ステップ①:矯正治療が控除の対象になるか確認する
矯正治療はすべて医療費控除の対象になるわけではありません。次のようなケースは医療費控除の対象になります。
・子どもの歯並びや噛み合わせの異常を治すための矯正(成長発育に悪影響を及ぼすと診断された場合)
・成人でも、咬合異常や顎変形症など医療上の必要があると判断された場合
一方で、以下のような審美目的の矯正治療は対象外です。
・見た目を良くすることが目的の矯正(特に医師の診断書がない場合)
・医療上の必要性が証明されていないケース
ステップ②:医療費控除の対象となる費用を整理する
医療費控除の対象になるのは、治療に直接関係する費用です。矯正治療で対象となる代表的な項目は以下の通りです。
・初診料・診察料
・精密検査費用
・矯正装置の費用
・調整料や定期検診費用
・保定装置(リテーナー)の費用
・通院のための交通費(公共交通機関)
ただし、以下の費用は対象外です。
・自家用車のガソリン代や駐車場代
・歯ブラシやマウスウォッシュなどの物品費
・ホワイトニングなどの美容目的の処置
ステップ③:必要書類を準備する
医療費控除を申請するには、いくつかの書類が必要になります。
・医療費通知書(医療機関から届くもの)
・医療費控除の明細書
・確定申告書
・診断書(必要に応じて)
特に審美目的ではないことを証明するため、お子さんの矯正治療や大人の機能改善目的の治療には、診断書を用意しておくと安心です。
ステップ④:確定申告を行う
医療費控除の申請は確定申告で行います。会社員であっても、医療費控除を受ける場合は年末調整とは別に申告が必要です。
申告方法は以下の3つがあります。
・税務署で直接提出
・郵送で提出
・e-Tax(電子申請)
e-Taxを利用すれば、スマートフォンやPCからの提出が可能です。必要な書類をデータで添付でき、控除額の試算もその場で確認できるので便利です。
▼矯正治療で医療費控除を申請する場合の注意点
◎審美目的と医療目的の違いを明確に
医療費控除を受けるうえで最も重要なのが、その矯正治療が「医療上必要なもの」であると明確に証明できるかどうかという点です。例えば、「前歯をきれいにしたい」といった美容・審美目的の矯正治療は、たとえ高額であっても医療費控除の対象にはなりません。これは、医療費控除が本来「治療」を目的とした医療行為に対して適用される制度であるためです。
一方、次のような場合には医療上必要と判断され、控除の対象になる可能性があります。
・咬み合わせが悪く、咀嚼機能に支障がある
・顎関節症や発音障害の改善を目的とした矯正
・成長期のお子さんにおける、発育を妨げる咬合異常の改善
特に成人矯正では、医師による「機能改善を目的とした治療」であるという診断書や治療計画書が客観的に必要性を示す資料として有効です。審美目的か、医学的な治療かの線引きは非常に重要ですので、治療を始める前に歯科医師と十分に相談しましょう。
◎医療費控除の対象になる年度を確認する
医療費控除の対象となるのは、実際に医療費を支払った年の分です。たとえば、矯正治療の契約を2024年に行い、治療費を2025年に支払った場合、控除の対象となるのは2025年分の所得です。
このとき注意が必要なのは、「契約書の日付」ではなく「支払日」が基準になるという点です。矯正治療は分割払いにするケースも多くありますが、控除対象になるのはその年に実際に支払った金額のみです。領収書に記載された日付や支払履歴が申告内容と一致することが重要ですので、毎年の支払い記録は丁寧に残しておきましょう。
◎領収書や明細の保管は必須
医療費控除の申請には、「医療費控除の明細書」の提出が必要です。これは、1年間に支払った医療費の内訳を一覧にまとめた書類です。ただし、申告の際に領収書そのものを添付する必要はありません。
とはいえ、税務署から確認を求められた場合に備えて、医療機関から発行された領収書は5年間保存する義務があります。特に矯正治療は長期にわたることが多いため、年ごとの支払い内容をきちんと整理し、ファイリングしておくことをおすすめします。また、保管しておくことで、ご家族の通院費も含めた年間の医療費総額を把握しやすくなり、申告時のミスを防ぐことにもつながります。
◎交通費の記録も忘れずに
意外と見落とされがちですが、通院にかかった交通費も医療費控除の対象となります。ただし、対象となるのは公共交通機関を使用した場合に限られ、自家用車のガソリン代や駐車場代は含まれません。
また、申請するには以下のような情報を明確に記録しておく必要があります。
・通院日
・診療を受けた医療機関名
・利用した交通手段(例:電車、バス)
・支払った運賃
たとえば「○月○日 〇〇歯科まで電車で往復××円」のように記録を残しておくと、確定申告時にスムーズです。家計簿アプリや通院カレンダーなどを活用して、日常的に管理しておくと良いでしょう。
◎子どもの矯正治療は特に控除対象になりやすい
お子さんの矯正治療は、成長過程での骨格や咬合の異常を改善する医療的意義が強く、医療費控除の対象として認められやすい傾向があります。とくに、歯並びの乱れが発育に悪影響を与えると診断されている場合は、審美目的ではなく医療目的と明確に分類されます。
診断書がなくても、治療計画書や医師による説明文があれば、その内容が合理的であれば控除対象とされることもあります。心配な方は、治療前に「この治療は医療費控除の対象になりますか?」と医師に確認しておくと安心です。
◎高額療養費制度との違いに注意
医療費控除とよく混同される制度に「高額療養費制度」がありますが、この制度は健康保険が適用される診療に限って、自己負担額の上限を設ける制度です。そのため、基本的に自費診療である矯正治療には該当しません。
一方、医療費控除は自費診療であっても、医療的必要性が認められれば申告できる制度です。したがって、矯正治療において費用軽減を考える場合は、「高額療養費制度」ではなく「医療費控除」を検討しましょう。
◎矯正ローンを利用した場合は?
矯正治療費をローンや分割払いで支払っている場合、そのローン契約の総額全体を控除対象にすることはできません。控除の対象になるのは、あくまでその年に実際に返済した分の金額のみです。
たとえば、月々2万円ずつ支払っている場合は、1年間で24万円を支払ったことになります。この24万円が医療費控除の対象になります。利息部分は控除対象外となりますので、ローン明細をしっかり確認しておきましょう。
また、クレジットカード払いの場合は「カード会社に支払いが確定した日」が支払日としてカウントされます。支払い方法によって処理のタイミングが異なるため、処理日と請求日のズレにもご注意ください。
▼まとめ
矯正治療は、歯並びや噛み合わせを整えるだけでなく、将来的なむし歯や歯周病の予防にもつながる大切な医療行為です。しかし、費用面での負担も少なくはありません。そんなとき、医療費控除の制度を正しく活用すれば、家計への負担を軽減することが可能です。
ただし、申請にはいくつかのルールや注意点があるため、「医療目的であること」「支払時期の確認」「書類の保管」などをしっかり意識することが大切です。ご不明点があれば、当院でも医療費控除に関するご相談を承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。