成人矯正で抜歯は必要?非抜歯矯正との違いを解説|成人矯正専門サイト|鎌倉市の歯医者 医療法人社団Craile 鶴岡歯科医院

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成人矯正で抜歯は必要?非抜歯矯正との違いを解説

皆さん、こんにちは。鎌倉駅西口より徒歩3分の鶴岡歯科医院です。

成人してから歯並びを整えたいと考える方の中には、「抜歯が必要と言われて不安」「なるべく歯を抜きたくない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?矯正治療では、歯を抜くことで理想の噛み合わせに導くことがありますが、近年では非抜歯で行えるケースも増えてきました。本コラムでは、成人矯正で抜歯が必要となる理由や、抜歯矯正と非抜歯矯正の違いについて詳しく解説いたします。自分にとって最適な矯正方法を選ぶための参考になれば幸いです。

 

▼成人矯正で抜歯が必要な症例

 

◎顎の大きさに対して歯が大きい場合

成人矯正で抜歯が必要となる代表的なケースが、「顎のスペース不足」です。日本人は欧米人に比べて顎が小さい傾向があり、その中にすべての歯を並べるには十分なスペースがないことがあります。その場合、歯が重なって生えたり、前方に突出する「出っ歯」になったりする原因となります。抜歯によってスペースを確保することで、歯列全体を理想的な位置に収め、自然で機能的な噛み合わせを実現できます。

 

◎重度の叢生(歯のガタガタ)

「叢生(そうせい)」とは、歯がデコボコに並んでしまっている状態を指します。軽度の叢生であれば、非抜歯でも改善できる可能性がありますが、重度の場合は抜歯が必要です。抜歯によってスペースを作ることで、歯を一列に整列させる余地が生まれ、見た目だけでなく、歯みがきしやすくなることでむし歯や歯周病の予防にもつながります。

 

◎上下の前歯の突出(上下顎前突)

上の歯も下の歯も前方に突出している「上下顎前突」は、口元が出て見えやすく、見た目のコンプレックスになることがあります。このようなケースでは、上下の小臼歯を抜歯することで前歯を後退させ、すっきりとした口元に導きます。審美面と機能面の両方を考慮して抜歯が選択されることがあります。

 

◎前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」

前歯が噛み合わず、奥歯だけが接触している「開咬」の場合も、抜歯が適応になることがあります。開咬は発音や咀嚼機能に影響を与えるため、治療が必要です。抜歯によって奥歯と前歯のバランスを整えることで、上下の前歯がしっかりと噛み合うようになります。

 

◎骨格的な問題を伴う場合

骨格のズレや顎の成長の不調和がある場合は、矯正だけでは対応できず、抜歯によってスペースを確保しながら骨格的なバランスを調整する必要があります。成人では顎の成長が完了しているため、外科矯正が必要になることもありますが、抜歯による対応で改善できるケースもあります。

 

▼抜歯矯正と非抜歯矯正の違い

 

◎抜歯矯正とは?

抜歯矯正とは、主に小臼歯を抜くことでスペースを確保し、歯列全体を整える治療法です。特に顎の大きさに対して歯のサイズが大きい場合、無理に並べようとすると前歯が前方に押し出されてしまい、口元が出てしまうことがあります。抜歯矯正では、そのスペース不足を解消し、歯を正しい位置に配置することが可能になります。

 

【メリット】

・歯並びを整えるための十分なスペースが確保できる

・前方に突出した歯を後退させ、口元のバランスを整えられる

・重度の叢生や骨格的な問題に対応しやすい

 

【デメリット】

・健康な歯を抜くことに抵抗を感じる方も多い

・治療期間がやや長くなる傾向がある

・抜歯部位のスペースをコントロールするため、より高度な治療計画が必要

 

◎非抜歯矯正とは?

非抜歯矯正とは、歯を抜かずにスペースを確保して歯を並べる治療法です。歯列全体を横方向や前方に広げたり、歯をわずかに削って(IPR:歯間削合)スペースを作ったりすることが一般的です。歯を抜かずに済むため、心理的な負担が少ない治療法として人気があります。

 

【メリット】
・健康な歯を抜かずに治療できる

・抜歯後のスペース管理の必要がない

・矯正後の顔貌の変化が少なく、自然な印象を保ちやすい

 

【デメリット】

・十分なスペースを確保できないと、無理に歯を並べることになり、前歯の突出感が出る可能性がある

・噛み合わせが浅くなったり、歯の根の安定性に影響を与えたりすることがある

・症例によっては適応できないこともある

 

◎適応症の違い

非抜歯矯正が適しているのは、主に軽度から中等度の叢生や、上下顎骨のサイズに余裕がある症例です。たとえば、歯列全体のアーチ幅が広く、歯のサイズが小さい方は、歯を抜かずとも自然に整列させるスペースを確保しやすく、非抜歯での矯正が十分に機能します。

 

一方で、前歯の著しい前突や、歯列全体の重度な叢生(スペース不足による歯の重なり)、上下顎の前後的なズレ(骨格性不正咬合)などを伴うケースでは、非抜歯による治療だけでは審美面・機能面ともに十分な改善が得られない可能性があります。無理に非抜歯で治療を進めると、前歯がさらに突出して口元が膨らんで見える「口唇突出感」を招いたり、歯の軸が傾いて咬合に負荷がかかることもあるため注意が必要です。

 

骨格的な要因や軟組織のバランス(口唇の厚み、筋肉の緊張など)も加味し、包括的な診査・診断をもとに抜歯の必要性を判断します。

 

◎顔貌への影響

矯正治療は歯並びや噛み合わせを整えるだけでなく、顔貌(顔の見た目)にも大きな影響を与えることがあります。特に、口元の突出感や横顔のライン(Eライン=鼻先と顎先を結ぶ線)への変化は、患者さんの審美的な満足度に直結する重要なポイントです。

 

抜歯矯正では、前方に突出している前歯を後退させることにより、上唇および下唇の位置が後ろに下がり、Eライン内に収まりやすくなるため、口元が引き締まり、整った横顔に改善される効果が期待できます。これは特に「上下顎前突」と呼ばれる、口元全体が前に出ている症例で顕著です。

 

一方、非抜歯矯正では歯列を拡大したり前方に移動させたりするアプローチが多いため、口唇の突出感が強調されてしまうこともあります。骨格や軟組織に対する適切な評価を欠いた非抜歯矯正は、逆に顔貌の調和を損ねる原因となり得ます。そのため当院では、治療前に口元のプロファイルや側貌写真、セファログラム(頭部X線規格写真)を用いた骨格診断を行い、顔貌のバランスも考慮した矯正計画を立案しています。

 

◎治療後の安定性

矯正治療のゴールは、見た目の美しさだけでなく、長期的に安定した噛み合わせの獲得にあります。抜歯・非抜歯いずれのアプローチであっても、歯を無理なく顎骨内に収め、上下の歯が機能的に咬み合っていることが重要です。

 

非抜歯矯正でスペースが不十分なまま無理に歯を並べた場合、歯の軸が外に倒れる(唇側傾斜)傾向があり、噛む力に対して歯の根に過度なストレスがかかることがあります。これにより、歯根の吸収や歯肉退縮、さらには矯正後の「後戻り」のリスクが高まることが報告されています。

 

一方で抜歯矯正は、歯列に理想的なスペースを確保できるため、歯を正しい軸でコントロールしやすく、咬合力をバランスよく分散させやすいという利点があります。また、舌や口唇などの周囲筋圧との調和が得られやすいため、長期的な安定性が高くなる傾向があります。

 

いずれにしても、患者さんの骨格、歯列の状態、生活習慣(口呼吸、舌癖など)を総合的に評価したうえで、適切な治療方法を選択することが、後戻りの少ない安定した治療結果につながります。

 

▼まとめ

成人矯正において「抜歯が必要かどうか」は、単なる好みではなく、患者さんの顎の大きさ、歯の状態、噛み合わせ、顔貌のバランスなど、さまざまな要因を総合的に判断して決定されます。非抜歯矯正が可能なケースも増えていますが、無理に歯を並べることでかえって不自然な仕上がりになったり、後戻りしやすくなったりする可能性もあります。当院では、矯正治療の前に精密な検査と診断を行い、患者さん一人ひとりに最適な治療方針をご提案しています。成人矯正を検討されている方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。